大学生の自由帳

ペンギンパニックとエノキ工場の香り

拝啓僕によせて

 うわあああああああああああああああああ
 ガチ氷勝ち氷、死には全く分からない氷ありけり。その名は氷。ガチ氷。そんな氷ではないのに、自称氷くらいなのに、氷しか能がないのに、氷を愛でることしか興味が無いのに、女の子にしか興味が無いのに、殺傷にしか興味が無いのに、セックスにしか興味が無いのに、オナニーなんて興味ないのに、死になんて興味ないのに、桃源郷になんて興味ないのに、この世の全てに興味はないのに、皆死にたいのに、皆生きていたいのに、壁を破壊したいのに、言葉が溢れて来るのに、何も語れないのに、堅あげポテトしかないのに、誰にも褒められないのに、何がしたいのかも分からないのに、皆から認められてはいないのに、そこに誰もいないのに、弾幕でしか分からないのに、皆馬鹿なふりしてるだけなのに、自分は賢いと勘違いして、塩分をチャージして、糖分は捨てて、変な言葉遊びをして、変に距離を置いて、この世で一番つまらない惑星をかいつまんで、見せびらかして、嫌われて、死んで生きて、生き返って、輪廻もくだらねえと酒を飲み、でもその酒は馬の小便で、それはもう小便で、梅にしかならないし苔にしかならないのに、両性具有の差別用語をただまき散らして、嫌われて、でもなんで嫌われてるのかは分からなくて、LINEの通知音が鳴って、映画を見ている最中なのに鳴って、殺して、息は止めて、そこかしこから這い出てくるピエロに背を向けて、走り出して、言葉が後ろから追いかけてきて、止めどなき情景を睨んで、殺そう、と呟いてもそれは所詮ラッシーに過ぎず、君が為、惜しからざりし命さへ、と呟いてみても、その言葉がいつの間にかカタカナになって、オシカラザリシ、となっているのにも気づかずに、ただ言葉に追い越されていく、そこに合理的意味なんてありはしない、いや、世の中の全てに合理的意味なんてありはしないんだから、合理的なことを考えることは何の意味もない。そんな人間に、何の価値もない。死にたい。死にたい。いつからかずっと死にたい。なのに死ねない。僕の首をくくるための何かはとうにどこかへ行ってしまった。僕の首を絞めるための何かは、自我を持ち、足もあり、僕から離れて行ってしまった。何にも興味がない。本当は笑いたくないくせに笑って、人が怖いくせに笑って、そういう自分の心の内だけは蓋をして、そうして他人ばかり馬鹿にしている、お前のことだよ、そんなお前が僕は大っ嫌いだ。

 

 人を馬鹿にすることは、そんなに悪いことなのだろうか。そんなに忌み嫌われるべきことなんだろうか。文化は言葉でしか語れないのだろうか。君は私を嫌うだろうか。こんな駄文でも、誰か僕の事を愛してはくれないのだろうか。言葉に、合理的な意味はない。この世という実体は存在しない。ありもしない四次元空間について語って、形而上学の世界に逃げて、地面に穴を掘って、そこで原始人みたいに、馬鹿みたいにセックスをしているお前を殺して土に埋めたい。そこで使う土は甲子園の土じゃないと嫌だ。

 

 言葉のオナニズム、言葉のマスターベーション、何と言ってもらっても構わないが、セックスについて本気で研究する奴が馬鹿しかいないように、言葉について本気で研究する奴も馬鹿しかいない。言葉は、オナニーだ。自分さえ気持ち良ければいいんだ。他者と自分を媒介するためのコミュニケーションツールじゃない、自分でオーガズムを感じるためのものなんだ。他者のことを考えることは比較的(比較的、というのが重要)無意味である。有史以来、本当の意味でセックスをできた奴は誰もいない。皆、ただただオナニーの押し付け合いをしてきた。そうして、強姦が生まれた。言葉にも強姦がある。それはそれは強い強姦が。

 

 この世の中においては、ありとあらゆるものを殺すことができる。それは、蟻かもしれないし、人かもしれない。セックスかもしれないし、Gスポットかもしれない。パプリカかもしれないし、アパホテルかもしれない。ビーチかもしれないし、カレンダーかもしれない。テレビかもしれないし、猫かもしれない。人の心かもしれないし、心臓かもしれない。この世の中について考えることは全くもって無意味であって、ただ川のように、そして川から流れて来る桃のようにおとなしく、清らかで、静かで、女の裸なんかも白くて滑らかで、艶めかしく、それこそただ川のせせらぎと同程度のレベルの清らかな美しさで語ることも可能だったはずだ。そんな世界が、本当の世界だったはずだ。幼き頃の世界はそうだったはずだ。外にある居酒屋の提灯に、異国情緒を感じることだって、この世の他の宇宙を感じることだってできたはずだ。皆、小さい頃はそうだったはずだ。言葉なんて、いらなかったはずだ。

 

 そんな有史以前の態度をいつしか失い、ヘッドホンを耳にかけ、毒を仕込み、殺して死んで犯されて、合理的な言葉をファストフードのように飲み込み、そうして大人になっていくんだろう。それが僕にはどうしてもできなかった。僕の世界は、いつも美しかった。消えなかった。消せなかった。大人になれなかった。ただ、美しかった。

 

 僕の好きな人も、子どものような人だった。何にも成長できていなかった。他者ではなかった。自分だった。自分の分身だった。人を怖がっていた。そのくせ楽しいことが好きだった。いつも、現実世界について考えていなかった。空想の中で生きていた。ずっとにこにこしていた。傷つくことも、傷つけることも恐れていた。そうして何かからいつも逃げて……あれ、どうして涙が溢れてくるんだろう。
 
 俺は、頭で生きるんじゃなくて心で生きるんだぜ。誰だったかなぁ、そう言っていた人がいた。彼は、本当に馬鹿だった。心の底から馬鹿だった。だから、本当の人間だった。たった一人の人間だった。

 

 嘘だけは、吐かずに生きてきたはずなんだ。それだけは、僕の無意味な人生の中にある、唯一の誇りなんだ。もし、嘘を吐くことができたのなら、僕はまっとうに生きることができたのかもしれない。だけど、嘘を吐けなかったから、皆から馬鹿にされて、軽蔑されてきた。ただ、殻の中に籠ることしかできなかった。

 

 言葉は、人を殺せる。人を犯せる。これらはある人に贈る、呪いの、そして復讐の言葉である。