大学生の自由帳

ペンギンパニックとエノキ工場の香り

名大オーキャン体験記

※この記事には執筆者の主観がふんだんに含まれています。話半分で読むようにしましょう。

 

 今日、あいうえお作文のブログを進めるために図書館に行こうと思って名大に向かっていると、なにやら高校生っぽい集団が私の前を歩いており、その集団も私と同じく図書館に入っていった。はて、なんだろうと思ったら「オープンキャンパスの方はこちらに」というような貼り紙が貼ってある。なるほど、オープンキャンパスか。調べてみると、今日8月7日が教育学部、法学部、経済学部、工学部、農学部、明日8月8日が文学部、情報学部、理学部、医学部医学科、医学部保健学科の開催日らしい。私は文学部なので8月8日がオープンキャンパスだということは知っていたが、まさか二日にかけて開催されているとは思っていなかったため、今日がオーキャン開催日とは知らなかった。


 最近はあいうえお作文の記事を書こうとwordとにらめっこしているが、あいうえお作文に向き合えば向き合おうとするほどその深淵にずぶずぶ浸かって窒息しそうな感覚に襲われるので、ここは一つ、オーキャンの記事でも書こうではないかと思い立った。ついでに他の研究室の見学もできるまたとない機会なので、ぜひ見てみたい。要するに、現実逃避である。

 オーキャンではそれぞれの研究室において、所属する学生が来場者の質問に答えたり相談を受けたりするという企画があり、その人員を随分前から募集していた。私は自分の研究室がどういうことをしているのかを説明しようとすると爆発してしまう気がしたので全くもって行く気などなかったのだが、オーキャンの記事のためにも参加しようと思った。どうせ4月くらいに南部食堂に大量に出現する学歴マウンティング新入生の卵みたいな奴ばっかりいるんだろうなと思うとあまり気乗りしなかったが。

 

 思えば、私は名大のオープンキャンパスにはきちんと参加していなかったように思う。確か高一か高二の時に参加したのだが、文学部の全体説明会みたいなのだけ行って、研究室の説明会には行かなかった。しかもそこで覚えていることと言えば、説明を聞いている途中に突然天井から水滴が一滴、凄まじい勢いで降ってきて、机の上に開いていたパンフレットが濡れたという嘘のような本当の話しかない。一滴と言えど本当に勢いがすごく、一瞬私のパンフレットだけ銃撃されたのかと思ったほどである。ちなみに水滴が落ちた先には東洋史学の研究室の説明が書かれていた。
 この話はいまだに親とするが、「あの時から名大に行くことが決まっていたんだろうねえ」という結論でいつも話は終わる。そんな運命論みたいなことがあるものだろうかと思いつつ、実際に起こったことなので信じたくなるような気もしなくはない。もしかするとこの記事を見ている名大志望の受験生などがいるかもしれないが、パンフレットに水滴が落ちてきたら恐らくほぼ確実に名大は受かる。これは私が保証する。

 

 話を今年のオープンキャンパスに戻そう。当日、12時半から15時が研究室説明会の時間だったのだが、13時くらいから私はすでに飽きがきていた。思ったより説明要員もいたし、役目は果たしたと感じたので、頃合をみて他の研究室の見学に行くことにした。ここからがこの記事の本題である。ちなみに、自身の研究室の説明会については、取り立てて書くほど面白いことはなかったので特筆しない。


 まずは名大文学部最後の希望、インド哲学研究室である。名大文学部の「おもしろ」の74%を担っている研究室といっても過言ではない。この研究室が倒れた瞬間に名大文学部はただのおもんな集団*1と化し、名古屋大学文学部の看板もろとも奈落の底に消えていくので、新規の学生が入ってこようがこまいがぜひ頑張って欲しい。印哲の岩崎先生は確実に文学部で一番面白い先生なので、もし何らかの縁で名大文学部に入ることになった場合はぜひ先生の授業をとるといいだろう。

 

 印哲研究室を覗くと岩崎先生がオーキャン参加者を前に元気に歌を歌っていた。歌と言ってももちろん日本語ではない。サンスクリット語かなにか分からないが、とにかくそっち方面だ。歌じゃなくて説法かもしれない。なんだかよく分からないが、私も以前岩崎先生の授業で聞いたような気がする。私は印哲理解度がLv1なのではっきり理解できないのだが、先生が元気そうなので良しとしよう。*2

 

 印哲研究室の前には、記念撮影スポットが設置されていた。

これ。

 

 このスポットの存在は、Twitter、もといXで先生が投稿していていたので知っていたが、ここで私が写真を撮っても何も面白くないので、先生を被写体とさせていただくことにした。
 歌的な何かが終わって、オーキャン参加者がぞろぞろと出てきた頃合いを見計らい、先生に声を掛け写真を撮らせてくれないか聞くと、快く引き受けてくださった。早速撮影に移ることにした矢先、突然、きゅうりに乗ってもいいですかと聞かれた。

?????

 

 どうしてきゅうりに乗るのか。きゅうりでなければだめなのか。え、きゅうり? なんで? 一瞬のうちに様々な思いが交錯したが、先生がきゅうりに乗ることを止める権利は私にはないので、ぜひと言った。当日は結構面白かったのだが、今振り返ってみるとある種の狂気性を感じて若干震えている。

岩﨑先生の写真。ちゃんと掲載の許可もとったぞ!


 この緑色の物体について先生はきゅうりだとおっしゃっていたが、穢れた私の目にはどう見ても色反転したスイカにしか見えなかった。にしても、なぜきゅうりなんだろう。当日も「どうしてきゅうりなんですか?」という言葉が喉まで出かかったが、先生はあっという間にきゅうりを乗りこなし、あれよあれよという間に撮影が終わってそのまま颯爽とどこかに消えて行ってしまったため聞く機会を逃した。家に帰ってから、とりあえず「インド哲学 きゅうり」で検索したが、めぼしい情報は出てこない。インドときゅうりかも、と思って検索したが、インド人シェフのブログしか出てこなかった。*3

 それからも色々考えていたが、もしかしてお盆の精霊馬のことじゃないかと思い始めた。そうだ。きっとそうに違いない。お盆は仏教と関係があるものだし、別に先生が乗っていても不思議ではないだろう。しかし、精霊馬はご先祖様の霊が乗るものなので、仮に精霊馬だとすると先生はもうこの世にいないのか。なんだかこのままいくと生と死の境目はどこかみたいな哲学思想に突き進んでしまう気がするのでやめておくが、この際生きていようが死んでいようがどちらでも構わない。来年はぜひ精霊馬のコスプレで世界コスプレサミットにでも出て欲しい、と他専攻のくせに厚かましく思っている。*4

 

 次に考古学研究室辺りをうろうろしていると、私のことをオーキャン参加者だと勘違いした考古学研究生により「ぜひ見学してください!」と声をかけられたので、ぜひ見学することにした。どんな奴がうろうろしているか分からないので、勧誘の際には安易に声をかけない方がいいかもしれない。
 研究室の中に入ると、在学生による説明会場などではなくショーケースの中に土器が展示されているミニ博物館のような空間が広がっていた。

 

こんな感じの棚が三つくらいある。

 

 素直に感心である。え? すごくね? こんな博物館的な空間が文学部棟の中に存在するとは思わなかった。っていうか、研究室じゃないだろここ。展示室じゃねえか。何の研究もできないだろ……と日本文学専攻の自分としては思うのだが、多分考古学研究室には考古学研究室のセオリーがあるので、あまり深入りしない方がいいだろう。他専攻の分際でとやかく言っても仕方ない。あとこれは考古学なんとかかんとかみたいなところで、普通に研究室は別にあるのかもしれない。よく分かんなくなってきた。

 

 ちなみに、そこら辺にいた人にこの展示の写真を撮っていいか聞いたところ、「これはうちの研究室で堀ったやつで著作権とかないはずなので大丈夫です!」と言われたので写真を撮った。というか、これ自分たちで掘ってるんだ。凄いな。こんなものを自分で掘っているなんて、いよいよもって文学部らしからぬ雰囲気が漂ってきた。考古学研究室と地理学研究室は文学部なのかどうか、往年の疑問である。*5
 見学を終えると、去り際にチラシをもらった。土器が立体的に見えるアプリを考古学研究室で開発したらしく、その体験会(?)的なものをやっているのでよかったら参加してみてくださいとのことだった。土器を発掘し展示するだけにとどまらず、アプリまで開発しているらしい。本を読んでパソコンとにらめっこしながらキーボードをぶっ叩いているだけの自分の研究活動がなんだか恥ずかしくなってきた。日文もなんかクリエイティブなことやればいいのになーと思ったが、自分が全くクリエイティブな人間ではないため具体的な案が何も思いつかなかった。ゴミカスクリエイティビティ、略してゴミクリである。

 

 私の話は置いといて、どんどんいこう。次は、西洋古典学研究室だ。以前西洋古典学の友達から研究室のグループLINEを見せてもらったのだが、トプ画が最高級の笑顔でビール片手に中指を突き立てている院生の方の写真だったため、実は文学部の隠れた狂気かも知れないと睨んでいる。*6

 


 研究室の前に明らかに古代ギリシャ人のコスプレであろうと思われる人たちが立っていたので、これはなんですかと聞いてみたところ、やはり古代ギリシャ時代の服飾だった。そしてどうやらギリシャ人体験コーナーなるものがあるらしく、古代ギリシャ人の服を着ることができるそうなのでせっかくの機会と思って体験することにした。

 それにしても、研究室の中は窓から明るい陽射しが差し込み、テーブルには古代、中世など時代別に本が綺麗に並べられて展示されており、プラカードも置いてあった。扇風機や脚立、台車などが隅の方に押し込まれ、常にブラインドが閉まっているため薄暗く、本が乱雑に置いてあるうちの研究室とは違い、なんだか非常に清潔な印象を受けた。本当に隣の研究室なのだろうか?

 

チラシ。もらった。

 入り口に立っていた方の服はこのキトーンのドーリア式のやつで、私が着たのはイオニア式のキトーンだった。あまり大きな声では言えないが、体験と言っても、布みたいなのを被って、腰の所で紐を縛って、ネックレスとか付けただけで、感覚的にはほぼユニクロの試着室だった。ちなみに私は、「古代ギリシャ人になれるよ」という受付の人の言葉にときめいてのこのこ着いていっただけで、古代ギリシャ・ローマにも服飾にも死ぬほど興味がない。じゃあなんで体験したんだと言われそうだが、「古代ギリシャ人になれるよ」と言われてロマンを感じない奴などいるものか。幼稚園児が「このベルト付けたら仮面ライダーに変身できるよ!」って言われたら目輝かせて喜んでベルト付けるだろ。それとおんなじ原理だよ。くそが。そのため、イオニア式とかドーリア式とか言われても、そうなんだ以上の感想が出てこないが、まあいい体験ができたということにしよう。実際、後にも先にもイオニア式のキトーンを着る機会もないだろうし。

 

 最後は、フランス語フランス文学研究室である。名大文学部随一のオシャレ研究室であり、名大文学部の「オシャレ」の57%を担っている。これは単なる偏見だが、次点は英米文学だろう。

 

仏文研究室の入り口。ここからすでにオシャレ臭が漂っている。もはや「フランス」という言葉がオシャレの代名詞かもしれない。

 というか、仏文研究室は確か仏文第一と仏文第二に分かれていたはずだが、仲直りしたのだろうか。それとも今だけ共同戦線を張っていて、このオーキャンが終わったらまた離れ離れになるのだろうか。だとしたら、まるでホテルで冷たい逢瀬を重ね、時が過ぎればホテルで別れる愛人同士のようである。さすが姦通文学の本家本元、フランスと言ったところか。そういうところがフランス文学の愛すべきところである。文学は背徳的でなければ意味がない。

 

 研究室に入ると、クイズ大会のようなものが奥の方で開かれていた。なぜクイズ大会をしているのか私には全く理解できなかったが、まあ楽しそうなので良しとしよう。考古学研究室の説明の時も述べたことだが、個々の研究室がやっていることに口出しする権利は私にはない。

 仏文研究室は、本当に少しだけだが思い入れがある。第二外国語はフランス語だったし、この研究室の先生が開講しているフランス文化学の講義もとっていたからだ。しかし、フランス文化学の授業はほぼ寝ていたのであまり記憶に残っていない。よくよく考えたら別に思い入れなんてなかった。解散。

 

 入口らへんできょろきょろしていると、仏文の学生から仏文かるたのヒント集を貰った。

「仏文ひげカルタ」と書かれている。真ん中らへんに、さらっと「特に人称代名詞の使い方がとっても珍しい『心変わり』がイチオシ!」と書いてあるが、日本語訳じゃなくて原文で読めってことか。ふざけんな。

 

 もしかすると、先ほどのクイズの正体はこのカルタかもしれない。「ピンクの部分が読み上げられるよ!」と書いてあるし、そんな気がしてきた。普通に面白い取り組みだった。これ日文でもパクればいいじゃん、とゴミクリの私は思った。

右上にある、"vivre libre ou mourir!!"(自由に生きるか、さもなくば死か!)という文言が非常に良い。この精神で生きていきたい。

 

仏文の人は「年間行事が多い事だけがとりえです!」と言っていたが、コロナで研究室の行事が全て破壊された私にとっては、年間行事が多いことはこれ以上ないメリットだと思っている。

 この写真を見て大体わかると思うが、仏文は本当にオシャレかつ活発なのだ。名大文学部にこんな研究室があるとは……ほぼ絶滅危惧種な気がする。いや、それとも今後はこんな感じのが主流になってくるのかもしれない。ちょっと悲しい。

 どうやら参加者には飲み物も振る舞っているらしく、オレンジジュースかお茶か選んで、と言われたので、とりあえずオレンジジュースをもらった。どうやらお菓子も自由に取っていいらしい。こういう振る舞いが行われる研究室というのは、基本的に先生が優しい場合が多い。記事に載せてないだけで一応ほぼすべての研究室を見て回って思ったことだが、研究室の雰囲気とオーキャンの雰囲気というのは当然かもしれないが一致している。万が一高校生などがこの記事を見ていたら(多分見てないと思うけど)、そういうことも念頭に置いてオーキャンを見て回ると良いかもしれない。

 

オレンジジュース。遠近法によりきもい感じに写ってしまった。

 喋りかけられたとしても別に話すことなんてないので、間を持たすためにほぼ一気飲みのようなかたちでこのオレンジジュースを飲んでいると、段々オーキャン参加者でもないただの在学生なのにおもてなしされるのも申し訳ない、という気持ちになり、うっかりオーキャン参加者ではないことを伝えてしまった。このオレンジジュースに自白剤でも入っていたのだろうか。
 でもだからと言ってぶん殴られるとか、異端者として惨殺されるとかそのようなことはなく、「そうなんだ~、めっちゃ楽しそう!」というわりかし肯定的な反応が返ってきた。私も色んな研究室回りたいな~みたいなことも言っていたが、これは普通に社交辞令だと思うので乾いた笑みだけ返しておいた。私もそこまで分からず屋ではない。

 その後、仏文研究室を後にして美学美術史学研究室に向かったが、研究室に入る前に一年生の時に語学の授業が一緒だった名前も覚えてない奴に声をかけられてしまい気まずくなって退散した。その後日本史学研究室に向かったが、なぜだかそこでも「見学者じゃなくて在学生ですよね?」と言われてしまい苦笑いを浮かべながら退却した。

 仏文で正体を明かしたのをきっかけに、午前0時の鐘が鳴り魔法が解けたシンデレラのように次々と私がオーキャン参加者などではなくただの在学生であることがばれてしまったので、これにて名大オーキャン体験記は閉幕である。今回は四つの研究室しかとりあげなかったが、名大にはまだまだ面白い研究室があるので機会があれば取り上げてみたい。

 

 今度は高校生のふりをして他大のオーキャンに潜り込みたいなあ。

 

*1:非常に悲しいことだが、すでにそうなっているかもしれない。

*2:人文学入門2と生と死の人間学を受講していたのでLv1とさせていただいたが、知識量的には普通にLv0である。

*3:一応。url http://blog.chefhariom.com/?eid=511012

*4:非常にどうでもいいが、この日は数か月ぶりにnuctにログインをし、大学1年の時にとっていた生と死の人間学の講義を徹夜で見直すという非常に無意味な時間を過ごしてしまった。おかげで翌日の予定は寝坊した。

*5:だいぶ野暮ですが、念のため書いておくとただのジョークです。

*6:余談だが、今はそのトプ画じゃないらしい。