大学生の自由帳

ペンギンパニックとエノキ工場の香り

名大落研を偲ぶ

滅亡の恋人、破滅の帝王ことトイドラです。

全部破壊しよう。

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そんなことを考えながら日々を過ごしていたら、名古屋大学で最も破壊的だったサークルのことを思い出しました。

落語研究会です。

「思い出したも何も、落研は未だに現存するではないか?」

そう思う人もいるでしょうが、多分落研はここ1、2年の間に大きく変貌してしまったはずです。

そもそも、窓のないあのクソみたいな扉の向こう側、落研部室にどういう世紀末が広がっていたか、知っている人間の方が少ないことでしょう。

 

ここに書くことは全て過去のことであり、今の落研がどうなっているのか僕は全く知りません。

というか当時の落研にだってめちゃ一瞬しか関わっていないので、僕が知っていることはほんの一部でしかないし、主観が入ったエモエモな思い出でしかないゴミのような内容でしょう。

単なるおもしろエッセイとして読んでください。

あとここに書かれた内容は全部嘘なので、信じる奴はクソバカなんで情報セキュリティ研修100回受け直してきてください。

 

経緯は省きますが、何かの間違いで一瞬だけ落研にいたことがあります。

部室に初めて立ち入った瞬間の衝撃は未だに鮮明に焼き付いています。

部室に入った瞬間、まずは耐え難いほどに染み付いた煙草の不快臭が鼻を満たし、床には歪んだ畳が何畳か乱雑に敷かれ、真ん中に置かれた小汚い炬燵を中心に、プレイステーションのゲームや漫画本、快楽天やLOなどといったエロ本が散らばって万年床を形成していました。

クソでかい本棚が置いてあり、漫画本や雑誌やアルバムで埋め尽くされていたのですが、なにぶん落研は歴史が長いサークルなのでアルバムを開くと平気で昭和の写真が出てきます。

昔のOBがフィリピンパブで全裸のフィリピン人のおっぱいを揉んでいる写真や、全裸のフィリピン人がご開帳している隣で微笑みながらピースしている写真など、文化遺産のような写真が無数に挟まれていて興味深いアルバムでした。

その部室には、埃・ダニ・そしてダイナミックな退廃が長い歴史を経て降り積もっているようでした。

 

部室の机には落研の日誌のようなノートが置かれており、部員が日々適当なことを書き込みます。

開いてみると、だいたい風俗のレビューやセックスの話、狂ってしまった部員の独白、麻雀で儲けた話、安い風俗に行ったらデブが出てきた話など、三文小説のような文章が並んでいて俺はこんなサークルが現代にまだあるのかと感銘を受けました。

堕落していて、倦んでいて、最高でした。

 

一応落研には女子部員もいるのですが、エロ本が散らばった部室に居座れる女子部員はさほど多くなかったようです。

部室の日誌には、女子部員の誰々は美人だけどお袋に似てるからセックスしたくないギャハハみたいな話が書かれていました。

女性蔑視やセクハラは日常的なもので、そのへんはまさに昭和的でした。

それが悪いことなのかどうかは各自が勝手に考えてくれればいいですが、こういう雰囲気が今の時代まで連綿と継承されてきた訳です。

ゴミのような愛すべきサークルという他ない。

 

名大の部室は、当たり前ですが火気厳禁・禁煙です。

落研は大胆にも両方を破っており、部室には誰のものとも知れない煙草とライター、きったねえ灰皿が常に置かれていました。

一度あの部屋で一晩過ごしたことがありましたが、あまりに煙草の匂いがキツく起き抜けに体調不良になったほどです。

コロナ禍に入り、部室で密集することを避けるように大学からお達しが来ましたが、落研のメンバーは全く意にも介さずノーマスクで部室に集まっていました。

それどころか他大の人間も自由に出入りしており、モラトリアムの一番悪い部分が如実に発揮されたカスの倫理観であの部屋は常に回されていました。

部室の冷蔵庫には安酒と冷凍食品が常備されていて、部室で徹夜麻雀をする際などは酒浸りになりながらやりました。

未成年だろうと嫌がらなければ普通に酒を飲ませてもらえる環境で、大学デビューには持ってこいの聖域でした。

毎年恒例の新歓部室飲み会でも、新入生は参加無料で安酒を喰らうことができましたね。

そのせいで、落研部室外のゴミ箱は常に酒瓶だらけでした。

 

落研は、歴史が長いためOBの存在感が大きいようでした。

部室には現役生だけでなく卒業生も自由に出入りしており、頻繁にOBを交えた飲み会が開かれていたようです。

当然部室には現役のサークルメンバーしか入ってはいけないのですが、落研が大学の言うことを聞いたためしなど一度もないでしょう。

ついでに言うと、そんな狂った部屋に卒業後も入り浸るような人間など当然みんな頭がいかれています。

ある日やってきたOBは坊主頭のゲイで、男もメスイキさせるとアナル汁を吐くみたいな話をしていてシンプルに死んでくんねえかなと思いました。

 

あの部屋は週末になるとしばしば不夜城と化します。

一晩中何をしているかと言えば、炬燵の上で賭け麻雀をしているのです。

彼らは麻雀仲間をいつも求めていました。

僕も一度だけ参加したことがありますが、チャラい髪型をした南山大生に役満を振り込んで5000円負けました。

あの南山大生は今でも殺そうと思っています。

 

さて、そんな凝結したゴミのような場所だった部室ですが、今はどうなってしまっているか。

まあ具体的にどうなったのかは僕は知りませんが、サークルの中で対立が起きてOB側勢力が負けたのでした。

現部長の切実なメッセージが部活のグループLINEに載せられ、自分は名ばかりの部長を務める気はない、OBの先輩方が自由に部室を使うせいで現役生が落語の練習をできないのはおかしい、今後は部室の鍵を現役生だけが開けられるように改革する、等々。

俺は感動したね。

現部長のような人が、今まで現れなかったことが情けないんです。

バカみてえな屑の掃き溜めみたいな人間を野放しにして、それでも居づらさを感じていた部員は決して少なくないと思っていました。

事実、上の世代が部室にタールを染みつかせながらギャハギャハ喘いでいる一方、わりあい真面目に落語をやろうとしている人間もいて、というかギャハギャハ言ってる連中もいざ落語をやるときには真面目に取り組んでいて狡猾と思ったのだが、とにかく落研も他のサークルと同じく一枚岩ではなかったのでした。

そういうわけで、実に真っ当な倫理観と心地よい行動力を持った現部長によって、上の世代は追い出され、確かそのあと部室の大掃除が行われたんじゃなかったかな。

俺の予想では、もうあの部屋の中にエロ本はないことでしょう。

悪も文化だとするならば、俺はあの部屋の中にこびりついた悪辣な何かが失われたのが残念でなりません。

悪辣な何かは消滅したのではなく、野に放たれたのです。

あの悪臭の染み付いた狭い部屋に飼い慣らされていた何かが、無辜な者共を殺しに来るよ。

狂気は今もお前の隣にあるよ。

 

追記:2022.10.29

エロ本はまだ部室にあるそうです。

改革後、落研は普通のお笑いサークルになりました。

部室もクリーンになり、ゲームはPS3からSwitchに変わりマリオカートがよくプレイされているそうです。

旧体制が崩れた瞬間にはレギュラーメンバーが3人しかいませんでしたが、普通のサークルになった途端15人くらいに増え毎月2、3人見学が来ています。

ゲロみたいな風土こそ消されてしまいましたが、普通に新規サークルとは考えられない程盛り上がっています。