小学生のころ校庭の掃除をしていると、桜の木にワシャワシャと大量の毛虫がついているのを目にしたことがあります。
どこにでもいるので割と有名な毛虫です。
教師は「刺されるから触っちゃダメよ!」なんて言ってましたが、今思うとよくもそんなテキトーなガセ知識を教えてくれたもんですね。
この毛虫はモンクロシャチホコといい、全く刺すことはない人畜無害なふわふわベビーちゃんです*1。
ただ、その習性があまりにもキモいので、忌避反応を示す人が多いのは理解できます。
- バカみたいな数で群れる。
- モリモリ葉っぱを食い、地面をウンコで覆いつくす。
- 危険を感じると、血のように赤いゲロをばらまく。
- けっこう簡単に枝から落ちてくる。
- そもそも赤くて毛がモシャモシャで、鬱血したジジイみたいな見た目をしている。
とはいえ、キモい以外はマジで無害です。
触ってもプニプニするだけだし、ウンコやゲロだって全然汚くなく、むしろ桜フレーバーのいい匂いがします。
にもかかわらず、最近はモンクロシャチホコを駆除するためにわざわざ殺虫剤を撒く事例が増えているようですね。
近隣住民が「キモい!」とか「刺すから危ない!」と苦情を入れてそうさせているようですが、毛虫と殺虫剤どっちが有害なのかの利害計算もできないような人たちの意見をどこまで聞く必要があのか、はなはだ疑問です。
食おう
食いましょう。
モンクロシャチホコは美味しい虫としてかなり有名です。
近所の桜並木に探しに行きましたが、1群れしか見つけることができませんでした。
ただ、たった1群れでも30匹以上いました。
巣箱を作ります。
「えっ食うんじゃないの?」と思うかもしれませんが、ものには食べごろというものがあります。
蛹化直前の終齢幼虫になるまで、飼育してやろうというわけです。
ついでに、もう一つの狙いもあります。
ウンコです。
モンクロシャチホコはバラ科樹木の葉を食べるようですが、桜の葉を食べる個体はほんのり桜フレーバーになります。
ウンコは当然すばらしい桜の香りを持ち、これをお茶にすると何とも乙なものになるようです。
ところで、虫ウンコ茶といえば有名なのは蚕沙ですね。
蚕沙は蚕のウンコであり、漢方薬や嗜好品としてお茶にされますが、
「抹茶アイスの着色料は、なんとイモムシのウンコだった!! ひえ~~!!」
みたいな知りたくなかった系雑学として聞くことが一番多いです。
正直アホかと思いますが、こういう情報を聞いて抹茶アイスを不買したり、会社にクレーム入れたりする意識のお高い方々もいるようです。
石油から化学的に合成された着色料と天然の生き物由来の着色料、どっちの方が良質なのかも考えられないんでしょうか。
というわけでウンコティー。
色は非常によく、見事な赤でまさしく桜です。
香りも強烈な桜餅の香り。
この香りはクマリンという香気成分に由来しており、桜の葉の塩漬けやシナモン、マメ科植物やパセリ等の香草、ズブロッカなども同じ香りを持ちます。
果たしてその味は。
実際飲んでみると、正直ややうまみに欠けます。
まあただのソメイヨシノの葉っぱなので、さすがにお茶っ葉ほどの味わいにはなりませんね。
個性的な甘い香りは好印象な一方、多少薬っぽい風味にも感じます。
砂糖を加えると青臭みといやな苦みが立つので、ストレートが一番でした。
ただ残念ながら、僕はソフトドリンクを飲むと体が爆発して死ぬ体質です。
残りのウンコは酒に漬けて、ティーリキュールとズブロッカとトンスルのキメラみたいなものを作ってみようと思います。
まあ、残りのウンコと言ってもまだこんなにあるんですが。
ちなみにこのウンコ、縦に6列の規則正しい切れ目が入っており、手榴弾っぽい見た目です。
どんなケツ穴をしてたらこんな形になるんでしょうか。
やめてくれ、毛虫
さて、お手製の飼育箱で飼育すること数日。
う~ん脱走。
空気穴がでかすぎたかな?
次の日。
なんか足がむずむずするな~
やめてくれ。
マジで。
どこから逃げ出してるのか見当もつかない。
さらに次の日。
こうなるとさすがの僕も疑心暗鬼です。
椅子に座る、ベッドに寝転がる、何をしていても知らず知らず毛虫を潰していないか不安になってきます。
しかも不運なことに、明後日には家に恋人が来るので、1匹でも部屋に毛虫を残しておくと極めてヤヴァイ事態になるでしょう。
キモい毛虫なんぞのために天涯孤独を味わうのはまっぴらごめんです。
大掃除、START。
こうして、毛虫どもは風雨にさらされながら屋外で飼われることになります。
自業自得だぞ!!!!!!
そして、ここにきてようやく毛虫の脱走ルートが判明しました。
そんな意味分からんとこに入り込まんでくれ。
キモいから。
そろそろ食うぞ
ある日を境に、モリモリ減っていた餌が減らなくなり、突然巣箱から虫の気配が消えました。
もしかして。
やっぱり蛹になっていました。
蛹の直前を狙っていたのですが、蛹も美味いらしいのでまあいいでしょう。
終齢幼虫もちゃんと数匹いました。
ところで、蛹ってけっこう機敏に動くんですね。
触るとビクン!ビクン!って感じに動くので、シンプルにキモかったです。
ちなみに、終齢幼虫は見た目が毛虫なのに動きは蛹っぽくビクン!ビクン!という感じだったので一番キモかったです。
「一寸の虫にも~~?」
「「「「五分の魂~~~!!」」」」
茹でました。
茹でたら蛹も幼虫も全体的に伸び、蛹が一個爆発しましたが味に問題はありません。
まずは蛹。
噂通り美味しいです。
主張の激しい味ではなく、シンプルにバランスが取れて美味い。
豆系の味に、強い甘みと程よいうまみも感じられ、桜の風味は思ったほど強くはないがしっかりと分かる程度には香ります。
単体で酒肴やおかずになるような味ではないので、ガッツリ味付けた方が良いかも。
皮がパリッとして食感はいいが、口に残るのがマイナスポイント。
幼虫。
味のニュアンスは蛹と同じだが、端的にこっちの方がうまいです。
うまみがより強く、肉感があって小エビを思わせる味です。
蛹特有の香りもないので、食べやすいでしょう。
蛹と違って硬い皮がなく、むにっとした歯触りになるのは人によって良しあしか。
毛のおかげで味が絡みやすいという意外な利点もあります。
毛の食感は全く気になりません。
完食
噂通り美味く、日本酒が進みました。
抵抗感と手間こそあれ、単純な味で言えば終齢幼虫は食材として売っててもいいレベルです。
あと、個人的に虫を食うことに対する抵抗感がどんどん減っているのを実感しました。
美味い虫を食えば、ちゃんと脳が食材として認識するようになってくれるようです。
いやキショいけどね。
*1:つーかそもそも毛虫の中でも刺毒を持っているものはごく少数なので、「毛虫=刺す」みたいな思考をしてる人はこの機会に悔い改めてください。