大学生の自由帳

ペンギンパニックとエノキ工場の香り

カイコの幼虫を食べてみた。

はじめましての方ははじめまして。笹森です。

まず、タイトルからお察しいただけるかと思われますが、イモムシが苦手な方はブラウザバックを推奨します

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テラフォーマーズ 第1巻より

今世間では昆虫食がブームとなっています。

その中でも皆さんご存知の通りカイコはとてもメジャーです。

漫画「テラフォーマーズ」や「宇宙兄弟」でもカイコを食べる描写があり、長野県や遠く中国でもカイコを食べる文化は存在しています。

しかしながら、食用とされるのは基本的に蛹としてです。

これは、そもそもとしてカイコを育てる目的が糸を採ることであり、糸を吐く前の幼虫を食べるのは本末転倒であることに起因します。

よって、市場に出回るのは基本繭を作った後の蛹であり、カイコを育ててでもいない限り幼虫を食べるのは非常に難しいです。

 

ということで、カイコの幼虫を食べてみました。

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カイコ幼虫 3齢~4齢

腸の中身を空っぽにするため、あらかじめ3日ほど絶食させています。

3日ごときの絶食をものともしないカイコ。生命力豊かです。

 

実食

4齢以上になると錦糸腺が発達してしまい触感が悪くなるらしいので、まずは3齢幼虫をオーソドックスに茹でてみました(さすがに生食は抵抗があった)。

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1分間茹でた3齢幼虫。弾力は生前と変わらず、今にも動き出しそう。

茹でて少し桜色になった幼虫を、抵抗を飲み込んで口の中へ。

噛んだ瞬間に口の中全体にイモムシ独特の風味が広がります。

イモムシの風味といっても一般の方にはわからないと思われますが、ナッツ類の皮にやや近いです。

以前にミルワームを乾燥させたものを食したことがあるのですが、それとほとんど同じでした。

その芳醇な香りに続いてやや強いえぐみが広がります。

このえぐみがかなり好みを分ける要因になるかと思われました。

正直言って私はあまり好みではありません。

その後、うまみと言えなくもないような濃厚な味を持ったカイコの体液が舌に届きます。

思ったほど後味は尾を引かなかったのですが、皮が噛み切り辛く口の中に残ります。

 

美味いか不味いかで言えば、不味いとは言えないが美味いとも言えない。

なんとも微妙な味でした。

 

しかし生き物には個体差というものがある。

もしかしたらこの個体が特別不味かっただけかもしれない。

加えてこの「濃厚なうまみ」が何かに似ているような気がし、それらを確かめるために2匹目を鍋の中へ。

今度は茹で時間を3分に伸ばしてみました。

 

口に入れ咀嚼。

先程と変わらぬ味が広がる。

その時に訪れた感情は、まぎれもなく「後悔」でした。

 

蛾類を愛する私は昨年秋にとあるカイコ愛好家の方からカイコの3齢幼虫10匹を譲っていただきました。

カイコは一匹も欠けることなく成長し、すべて成虫になりました。

うち雌7匹は合わせて1000を超える卵を産み、それが今春に羽化しました。

今日私が食べたのは、私自身が孵化日数を揃え、齢ごとに分けて管理し、餌代のためにバイトをし、病気にならないよう掃除の度にエタノールで滅菌消毒し、そうやって愛情を注いで育ててきたカイコです。

もちろん私も農学部に所属する一人です。

牛や豚といった家畜を愛情をもって育て、殺し、感謝をもって食べる。

その営みは尊いものであり決して忌むべきものではありません。

しかしながら、カイコの幼虫は美味しくないのです

命をいただいている以上我々は美味しく食べなければいけないのに。

なぜ私はおいしく食べられないようなものを殺してしまったのだろうか。

なぜこんなにも命を無意味に消費してしまったのだろうか。

そういった後悔が私の胸に去来しました。

 

当初は齢や調理法ごとに食べ比べを行う予定だったのですが、私の心は折れ、残ったカイコたちを飼育容器に戻しました。

 

皆様、食べ物は美味しくいただきましょう

 

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3日ぶりの食事にありつくカイコの幼虫たち。

 

「濃厚なうまみ」は生のアボカドに近いように感じました。

 

今度は蛹を食べてみようと思います。