箱入りの
両親に丁寧に育てられた。
「そんな体に悪いもの、あなたは食べなくていいんだよ」とカップ麺やインスタント食品の類いを食べることを、やんわりと禁じられてきた。
そんな人間が一人暮らしを始めて親の監視の目から離れた時、どうなってしまうのだろうか。
もうそれはそれは恐ろしい。

うおおおお!!俺は自由だ!!カップ麺食うぞ食うぞ食うぞ!!ヤッター!!もりもり!!もりもり!!
・・・とはいかず、特に反動を起こすこともなく、自炊生活をダラダラと続けて、気が付けば私は大学3年生になっていた。
しかしながらそんな私は、昨年「大学生の自由研究」と「意味もなく続く」によって共同開催された「フリースタイルRTAサミット2024」内の種目「カップヌードル」にて、生まれて初めてカップヌードルを食べることに成功したのである。

そう、波が来ているのだ。チャレンジの波。この波に乗らなければ草木は枯れ、大地は荒れ果て、天神が怒り千種区は滅びる。

食うぞ、ペヤング
カップ焼きそばを食べるときにランチョンマットを敷くのはコロケーション的にNG?

近所のコンビニやスーパーを何件か回ったが、なぜかどこも「焼きそば Big」しか置いていない。そんなお節介は要らない。私はレギュラーサイズが欲しかったのに・・・
初めて手に取った感想「軽すぎる」はカップヌードルを初めて持ち上げたときと全く同じだった。食べ物として存在するのに必要な質量がないのだ。恐怖すら覚える軽さである。



480ml!?!?
480ml測らないといけない!?これは面倒くさすぎる。

480という数字に心をかき乱され包装紙を捨ててしまい、この10秒くらいの間に必要な水の量と時間を忘れ悲嘆に暮れていたが、なんと内蓋にQRコードを発見!ありがとう!ありがとう!

QRコードを読み取ると、ペヤングのシリーズごとの調理方法がまとめられたサイトへと飛んだ。なるほどこれは便利。

と思ったが、あまりにも種類が多い・・・
ペヤングソースやきそばレターパッケージは私のペヤングとはどう違うの・・・?

あった!!しかも中盤にあった。何で?
そしてこれを見るにどうやら「BIG」が言わばレギュラーサイズ、スタンダードのペヤングソースやきそばらしい。初見殺しである。


公式サイトの調理方法説明はこの通り。
自信がないのでこのレシピとにらめっこしながら作ることになるのだが、何だかとても自分が情けなくなったので自立した大人の皆さんはぜひフリーハンドでペヤングソースやきそばを作って自己肯定感をマネジメントしていただきたい。クラスのみんなに自慢しよう!
作るぞ!

緊張の一瞬である。そうこれは私にとって一つの重要なイニシエーションなのだ。

ペヤングスパイスって何?みんな入れてる感じ?
いや・・・与えられたものは拒否せず全てを受け入れる。目を閉じて、ペヤングに吹くうら若き風を感じる。それがイニシエーションなのだ。

「かやく」が思っていたよりも野菜。すごい。もっと紙吹雪みたいなショボショボおベジのなり損ないみたいなものを想像していたので驚いた。すごい時代だ。そしてこのクルトンみたいなのは何?
と、ここまで来て肝心の熱湯を用意するのを忘れていたので、慌ててお湯を沸かし始めた。カップ焼きそばを作る段取りの悪さが一級品。
480ml、しっかり測った。そして今後カップ焼きそばを初めて食べる方々にとってはネタバレになってしまうが、実は計量カップで測らなくても良いということを後になって知ることになる。だけどそれはまた別のお話。
お湯(480ml)が用意できたぞ!

うおおおおおおGOGOGOGOGO!!
シュワシュワ音が鳴って何だか楽しいぞ!!

なんかお湯多くない?大丈夫?ラーメンじゃないよね?これ水全部吸う?マジ?

不安を抱えつつ、お湯complete____
あっ!!!!!!
時間測るの忘れてた!!!!!!

ギリギリ間に合った・・・
あっ!!!!!!
蓋閉めるの忘れてた!!!!!!
※本当に焦っていたので写真がありません
ヤバい!!!!閉まらない!!!!!何で!?!??そこは責任持って閉まってくれよ!!!!!!

みかんで・・・
ちょっと待って!!!!!!!
みかんがぬるくなっちゃう!!!!!!嫌だ!!!!!!!!!

メンダコで・・・
ちょっと待って!!!!!!!

2分しか測ってねえ!!!!!!!!3分必要なのに!!!!!!!!

この3分間で怒涛の大騒ぎをしたせいで、何だかとても疲れてしまった。私はカップ焼きそばの一つも満足に作れないということが完全に証明された。生きる価値ない。
それから、あれだけお湯の多さを心配していたが、よく考えたら全部「湯切り」して捨てるんだった。私ってばうっかりさんなのね。火葬場に向かいます。
いざ「湯切り」

インターネット鉄板ネタ「湯切り失敗エピソード」の数々に思いを馳せ、不安で胸がいっぱいになった。果たして、こんなダメダメな私に「湯切り」なんてできるのだろうか。

でも、もたもたしていたら、あんなに悪戦苦闘して3分測ったのが無駄になってしまう。進むしかないのだ。
イニシエーションは、懐疑した瞬間にそのイデオロギーを崩壊させる。
やるしかない!!進め若人!!迷うな!!


湯切りしてる・・・今、湯切りしてるよ。
故郷のおっ母さん、僕、湯切りしてる・・・

終わった・・・のか・・・?
やっと食える!

無事湯切りに成功し、cooked焼きそばをこの家に存在せしめることができた。私は成し遂げたのである。
クルトンみたいなやつは肉かな。シナシナキャベツも美味そうである。

ソースが墨くらい濃くてビックリ!

ここで割り箸をもらい忘れたことに気付き深い悲しみに襲われた。初めてのカップ焼きそばは、割り箸で食べたかった。かなり落ち込んだ。
これではまるで、ハイキングに革靴で臨むような、ボロジャージでテスラに乗るような、牛丼屋でラップトップを開くような、ティーカップで卵かけご飯を作るような、星明りに目を細めるような、

混ぜたらいい感じの色合いになった。匂いはかなり甘いが、正真正銘の焼きそばである。美味そうだ。腹が減ってきた。

危うく入れ忘れていた「ふりかけ」と謎の「ペヤングスパイス」を全量投入。匂いを嗅いでみたところ、胡椒的な何かであると思われた。これは「粋」。

完成!やったー!
とても感慨深い。私、ついにカップ焼きそばを食べるのか・・・。数々の苦難を乗り越えて作ったこのペヤングは確実に、私の人生におけるマイルストーンとなるだろう。

いただきます!
美味い!!!
ジャンクフードを食べた時のあの感じ。脳に直接届く美味さ。甘辛いソースとモッチリとした麺の相性がナイス。なんでもっと早く試さなかったんだろう。
キャベツも甘くて美味しい。でもクルトン肉は個人的にあんまり好きじゃなかった。ボソボソしてる。肉というより芋だ。芋肉。ポテミート。
普段あまり食べる量の多くない私でも完食できた。ものすごい満足感である。「BIG」がスタンダードとして受け入れられているのも納得がいく。

お前のおかげで美味しい焼きそば食べることができたよ、ありがとう
皆もカップ焼きそば作って食べよう。
