突然ですが、カメの甲羅からできた打楽器があるのをご存知でしょうか。
名前を「アヨートル(Ayotl)」と言い、リクガメの甲羅の腹側を叩いて2通りの音高を出す打楽器です。
テンプルブロックやウッドブロックにやや似ていますね。
演奏動画はこちら。
で、このアヨートルですが、なんとあのミシシッピアカミミガメでも作れるそうです。
これは作ってみるしかないでしょう。
ところがネットで調べてみると、ミシシッピアカミミガメでアヨートルを作ったという記述はいくつかあるものの、詳しい作り方までは載っていません。
「how to make ayotl」などと検索しても、そもそも英語圏の楽器ではないため結果は同じ。
というわけで、手探り状態から作っていき、自分なりにアヨートル制作のノウハウを得ていくことにしましょう。
そしてカメを求めて川へ。
ミシシッピアカミミガメ以外のカメも沢山いましたが、在来のカメは捕らないようにし、あくまで外来種のミシシッピアカミミガメを捕るようにします。
探せばいくらでもいるので簡単に捕れますね。
ほんとめっちゃ繁殖してんな。
今回は練習用に子ガメと大人ガメを1匹ずつ確保。
子ガメはカメ次郎、大人ガメはゲイジと名付けました。
カメ次郎
カメ次郎は、捕まえたその日のうちに加工してしまいましょう。
まだ子供なので甲羅も綺麗な緑色、好奇心たっぷりに
「なになに〜〜? なにしてるの〜〜?」
と顔を出してきます。
カメ次郎可愛いなあ。
しかし、ここで情に流されてはアヨートルが完成しません。
僕「ごめんな、お前には今からアヨートルになってもらう……」
次郎「?????」
さて、ここから地獄のような工程を経ます。
写真などは載せられませんが、言葉で説明するとこんな感じです。
- 包丁で斬首
- ニッパで四肢切断
- ニッパとハサミで四肢・尻尾・首周りの外皮を切断し肉を露出
- ニッパで甲羅にくっついた骨切断
- ニッパとハサミで甲羅と肉の接合面切断
- ペンチで全身の肉と内蔵摘出
- 茹でて甲羅の皮膚を剥がす
- ペンチでさらに肉を摘出
- 入れ歯洗浄剤に3日ほど漬ける
う〜ん、地獄ですね。
詳しく解説していきましょう。
まず1.で斬首して絶命させる必要があります。
食べるのでなければ血抜きをする必要はありませんが、後の作業が楽になるので血抜きするのをおすすめします。
次に2.で四肢切断します。
これはやっておいた方が次の作業が楽です。
なんせ四肢が付いたままだと暴れますからね。
包丁で落としてもいいですが、カメの皮膚はクッソ強靭なので、思い切ってニッパでバチンといきましょう。
3.では、カメの四肢・尻尾・首のところにある伸縮性のある皮膚を切ります。
普段は足や首を格納する場所ですね。
見た目やわらかそうに見えますが、これもクッソ強靭でなかなか切れません。
ニッパでバキバキ切れ込みを入れ、ハサミで切り離しましょう。
きちんと皮を切れば、内側の真っ赤な筋肉が露出するようになります。
そのあとは4.の工程が待っているわけですが、これは次の工程をスムーズにするために必要です。
上半身・下半身でそれぞれ鎖骨・骨盤が甲羅と接続しているため、これらを切らないと肉をうまく摘出することができません。
思い切ってニッパを突き刺し、骨を探り当ててバツンと切りましょう。
それが終わったら、とにかく全身の肉を甲羅から剥がす5.の作業になります。
手加減していると何時間もかかるので、ニッパとハサミを容赦なく突き立てて腹側・背側それぞれの肉を甲羅から剥がしていきましょう。
甲羅と肉が離れたら、6.でどんどん肉を摘出します。
どうせ茹でてからも肉を摘出するので、そんなに徹底的にやらなくて大丈夫です。
多少中空になったら、7.で全身を茹で、熱いうちに甲羅の皮をむきます。
カメは皮下にゼラチン質の層を持っているようで、熱を加えると全身の皮膚が簡単にむけるようになります。
冷める前に甲羅の皮膚をペリペリむいてしまいましょう。
むき終わったら、8.でさらに肉を摘出します。
甲羅と筋肉との間には薄い膜があり、茹でるとそれが剥がれやすくなるので、ペンチでその膜をつまんで剥がせると楽です。
ちなみに、正直この作業は素手でやるのが一番効率的なので、勇気のある人は素手で肉をかき出していきましょう。
ここでは徹底的に肉を除いてください。
最後に、9.で入れ歯洗浄剤の中に最低でも3日は漬けます。
酵素入りで液性は中性のものがいいです。
中性なら長期間漬けても甲羅そのものは弱らず、肉だけが酵素で分解されます。
さて、そんな途方もない工程を経て出来たものがこちら。
う~ん美しい。
カメ次郎は子亀だったので、背中の甲羅の一部がまだ軟骨で、ステンドグラスのように透き通っています。
いや美しすぎだろ……。
ちなみに、カメ次郎の四肢は後でスープにして食べました。
ゼラチン質の皮が厚くて肉はほぼありませんでしたけどね。
ゲイジ
さて、後日ゲイジにも全く同じ加工を施します。
ゲイジはカメ次郎の倍ほどの体長がありますが、そのせいでやはり全体的に加工がしにくかったです。
具体的に言うと首や四肢が硬い。
そのため、必要以上にニッパでメキメキやる必要があります……。
精神的ダメージは子亀の方が少ない気がしました。
また、カメ次郎に比べて全体的に骨がしっかりしており、分厚くずっしりしています。
なかなか頼もしい質感ですね。
余談ですが、ゲイジの身体にはそこら中に傷跡がありました。
てか捕まえた時も背中に怪我をしていましたしね。
一体どんな生き方してきたんだお前。
傷跡が多すぎるので、ゲイジは食べない方向性で行きます。
野生動物を食べる際には、不自然に弱っているものや怪我しているものは食べないようにしましょう。
仕上げ
こうして一応の形は完成しました。
この状態でもアヨートルとしては使えますが、補強のために塗料を塗って仕上げましょう。
今回は、柿渋の上からニスを塗り重ねてみました。
そしていよいよ完成したのがこちら。
我ながら完璧な出来になってしまいました。
見てわかるとおり、カメ次郎の方が全体にツヤツヤしていて見た目に美しいです。
それでは肝心の音はどうか?
さっそく聞いてみましょう。
カメ次郎
適当に叩いてみたがいや楽しいなこれ
— 冨田悠暉(トイドラ) (@toidora) April 15, 2019
音もなかなか悪くないので楽器としては成立してる
小さいのでそもそも音は高いが、ちゃんと2通りの音程(G2/1♭とC#くらいか?)が出てる#アヨートル pic.twitter.com/ny1QkWo8IR
ゲイジ
音も想像以上にいい
— 冨田悠暉(トイドラ) (@toidora) April 27, 2019
子亀バージョンの方が見栄えはいいが、やはり楽器としてはでかいカメの方がいいな pic.twitter.com/fB5yC9XZYd
ゲイジの音が良すぎる……。
こんなまともな音が出るとは正直思ってませんでした。
音量も相当でかく、完全に普通の打楽器です。
カメの標本をぶっ叩いた音だなんて間違っても思わないでしょう。
ちなみに、ゲイジは柔らかいマレットで叩くといい音がしますが、カメ次郎は割り箸のような木の棒で叩くのが一番良かったです。
甲羅が小さく薄いので、マレットで叩いてもうまく響かないのでしょう。
インテリアとしてはカメ次郎が相当に優秀ですが、楽器としてはゲイジの大勝利という結果でした。
最後に
さて、今回自分自身でアヨートルを作ってみましたが、正直ただカメを食うだけよりもキツい作業でした。
とはいえ、完成品が素晴らしい上に駆除対象のミシシッピアカミミガメを有効活用できるまたとない手段です。
というわけで、みんなで一緒にアヨートル作っちゃいましょう。
現時点でもう僕の予想を超える人数の方に参加表明してもらっています。
あと数日で募集締め切りですので、興味がある方はお早めに。
参加は自己責任でお願いしますね。(切実)